父の 思い出

父は ダンディーだった

おしゃれで、女性にも男性にも人望があった

最初は洋品店

軌道に乗ってからは呉服店を始めたから、それはそれで当然のようだった


商売をやめてからは、行く先々で、ファンができた

明るくて人情味があって、あたたかい人柄だった

そんな父も後年、認知症になり、三分の一は雲の上の人のようだったが

笑顔は変わらなかった


コップ一杯のビールに酔う父

昼間の鬱屈がたまったのだろう

日も暮れた真っ暗い夜、一家で食事をした帰り道、なんとも言えない表情を浮かべた父がいた

顔は酒で赤く、両手をスーツのポケットに突っ込んでいた

そうして、顔をそれでも上げながら歩く父の姿、忘れられない



父の口惜しさ

私が中学生の頃、父に連れられて、ある選挙討論会に行った

父は意気揚々と、私を、自慢気に、立候補者に紹介した

うちの大きいのです。

立候補者は、あからさまに蔑みの顔をしてやり過ごした

昔は差別も酷かった

父は半島人で、私達姉妹は日本生まれだが

その時の父の姿が思い出に焼き付いて離れない



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