生まれて初めて肩を寝違えた。痛くてうんうん唸っていたら彼女が起きてしまった。
「…どうしたの?」
ごめん、起こした。何か肩がすごく痛い、もしかしたら死ぬかもしれない。
「わあ…面倒くさい。おはよう、うわ寒い」
すみません…湿布を、湿布を貼って下さい。何故か首がつりそうで上手く貼れません…。
「はいはい」
こんなところ寝違えるんだなあ…。
「ほんとに寝違えたの?左?このへん?」
痛い!
お前、その貼る時思いきり叩くのマジやめろ、そこが患部だってことを決して忘れないで!!
「…可愛さ余ってつい。あ、よく効くように、おまじないの呪文も書きますか?」
……お願いします。
そして帰宅後
痛みもずいぶん引いて、痒くなったから剥がしたら、ああ。
初心忘るべからず。
友人の夫は山みたいな男だ。熊みたいとか言うには余りに厳つい。
この山男、昔からサンリオを愛してやまない。特にマイメロディには目がない、次点はモフィである。
そう、彼はウサギに弱い。
彼の趣味は、彼の屈強な見た目による絶大な相乗効果で大多数に理解されない。
「大抵、二の句にキモい言われる」らしい。
彼は言う「男はみんな可愛いもんが好き」だと。
昨日は、この友人夫婦宅に招かれ、お邪魔してきました。
山男「ももこさんはさあ、解るでしょ、基本さ、男はさ、みんな可愛い女の子大好きじゃんかあ〜」
ももこ「いや解んない。わたし女の子だもん、マカロンとか大好きですもん」
山男「いやいやいや解るじゃん。こないだ解るって言ってたじゃん」
ももこ「やめろ。違う、巻き込むな」
山男の妻、わたしの友人は小柄で色白の愛らしいこだ。言われてみればちょっとウサギっぽいかもしれない、しかし外見に反して中身は修羅だ。
サギ子「いや、そんなことはどうでも良い。私は、ただ買いすぎだって言ってるの」
サギ子がテーブルに振り下ろしたティーカップから深紅のダージリンが僅かに飛散し、和やかな筈だったお茶会に戦慄が走る。
あなおそろしや。
しかしサギ子は決して鬼嫁ではない。サギ子はいつでも真っ当なのです。清廉潔白であるが故に、わたしのように人間の出来ていないものは恐れ、畏怖するのだ。
山男の「本来男の方が可愛さに弱い」説は、確かに少なくとも一瞬、そうかもしれないと思わせる力強さがあった。
しかし、山男が約束を破った、それがサギ子の逆鱗に触れた。その事実は、何をどんなに論じても揺るがない。
大柄な山男がサギ子に淡々と説き伏せられ小さく丸くなっていく。
わたしは犬も喰わない横槍が飛んでこないことに安堵して、サギ子が初めて焼いたというマカロンをつまんだ。
彼は馬鹿だ。何でもそつなくこなす器用な友人の焼いた、地味な色の少し平たいマカロンはマイメロディよりずっと可愛いのに。
山男よ、まだまだだな。
わたしのほうが君よりずっと、可愛いものが好きなのだよ。
だって女の子だもん。
落ち込むと直ぐ尼とか貝になりたいとか言う、わたしはロマンチスト。
今まで生きて耳にした中で、ロマンチックだなあと感じた至高の言葉は、従姉が唐突に言い放った「私…琵琶湖の風になる」です。
彼女とクリスマスはいかが致しましょうか…という話になったので、わたしプレゼントにラブレターが欲しいわと言ってみたら、鼻で笑われました。
照れたら馬鹿にされそうだったので、真面目に頼んだのがいけなかった、冗談だと思われたに違いない。ほとばしる誠実さが仇になるとは、ぬかった。
たまには甘い雰囲気とか味わいたくないのんか、お前は。
わたしは憧れるよ。
彼女は映画が好きではないし、呑むとお互い眠くなってしまう
お洒落なディナー<<<越えられない壁<<<焼き肉食べ放題<<回転寿司だし
不器用なあなたにおすすめのアロマキャンドルも鼻炎の彼女にとってはシンプルな拷問器具でしかない。
詰んでいる…
と直ぐに思うのはわたしの努力が足りないのだろう。甘い雰囲気に憧れるのであれば、活路を見いだすべきだろうか。
眠る彼女のお腹がふくふく動くのをただ眺めているのも悪くないし、案外飽きない。
近頃は寒いから抱き合って眠る。わたしより少し背の高い彼女が小さく縮こまって腕の中に収まっている。
胸に耳を寄せて寝ぼけた彼女が「生きてるなあ」って無感情に呟いた。
「…なんだそれ死んでたら怖いだろ」って思わず突っ込んでしまう。すると何がどうツボにはいったのか解らないけれど彼女は大笑いして暴れだしてしまった。
結果「あっつい」ってポイされるわたし、正解が解らない。明日はどっち。
ラブレターでも書いてみようか。
※追記は下ネタ注意
ちょっと前、彼女に「お前の子供に会いたくて震える」キャンペーンを展開したところ、よつばと!というマンガ本を差し出されたのですが。
昨日TSUTAYAに行ったら、何ともタイムリーなことで、数年ぶりに新刊が出たらしく大量に平積みされていた。映画の返却しに寄っただけだったのに迷わず手に取った。
もう、すっかりはまってしまった。あれこれ深く考えさせられることなく優しい気持ちになるというかなんというか上手く言えませんが…これはいいものだ。
ところでわたし、近年加齢により涙腺が脆くなる事案に悩まされています。最も厄介なのは愛らしいと思うものを見ると涙が出る謎の脊髄(?)反射です。
人前で泣きっ面を晒したくはないのですが、この愛奴反射がここ数年とんでもなく研ぎ澄まされ、やたらと過剰反応を示すので困っています。痛みや悲しみ、怒りなんかにゃ負けないが、玉ねぎと可愛さには歯が立たない。
例えば出先でポメラニアンに遭遇するとかもう危険極まりないですよ。すまんがその犬をしまってくれんか、わしには強すぎる。
話それました。よつばとの主人公は小岩井よつばちゃんという女の子です。わたしは特別子供が好きな訳ではありません、しかしまあ、この子の愛らしさったらもう筆舌に尽くしがたい。
涙を堪えようとすると、却って鼻水が押し寄せてズビズビ鳴るし、終いには嗚咽まで上がってくるわで、必死に悟られまいとごまかすも、ああ狭い屋内、バレない訳もなく
先に読み終えていた彼女に「お前どこか悪いんじゃないの?」と、真顔でドン引きされる迄が昨日のハイライト。
うるせえ辛くないのに涙が出んのは大人の特権だよ!愛でろ、畜生!!
一度噛みつくと中々離れない情熱的なあなた。これはあなたをいとおしく思うからこそ言うのです、千切れんばかりに噛みつくと、まあるい赤黒い痣が出来ますね、そこが限界ですよ。
噛むときは、あばらの一番下の柔らかいところか、前腕の肘側にして下さい。但し、後者は慣れてくると余り痛みを感じなくなるので、加減をしないと血を見るはめになります。
ふともも(特に膝側)はやめろ、マジでやめろ下さい。それから、顔は言い訳が面倒です。お互い、健全な社会生活を望むのであれば、時には我慢も必要です。鼻が好きな気持ちは、十分伝わっています。
指に痣が残っている時は労って下さい、少なくとも全治一週間です。痣が薄くなっていても熱を持っている間は筋肉痛に似た鈍い痛みが続いています、結構だるいです。間接は成るべく狙わない様に。
時には叱ります、痛いからです。言い訳は無用です、反省して下さい。
以上。