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夜風に吹く光

それが在るが儘だったとしたら

人はそれが一番下手で

その結果が『今』なんじゃ無いかなー…

―――――ーーーーーーーーーーーーーー

夜の帳に白く冴えた月明かりが降る

吐く息は白く、空気が凛として冷たい…

見上げれば、幾つもの星が輝く

「眠れないのかい?」

優しく聞き慣れた声に見上げていた顔を横にする

自分と同じ白灰の髪、緑の首布

「…少し、空を見てたんだ」

薄い微笑を浮かべ、俺はまた空を見上げる

星読みは得意じゃない、何時もただ見ているだけだ…

大きな人影は諌めも同意もせず、同じく薄い微笑で立っている

…昔から『見守って』くれる存在…

お互いが顔を合わせるのは少ないし、事情も良く解っているつもりだ

朝日が昇れば、俺もまた学園に…任務に戻らなければならない…

「………」

白い息が天に溶ける

暫しの沈黙を破ったのは俺だった

「…人は…『在るが儘』に生きるのが下手なのかも知れないね…
だから、知恵を出して色んなモノを創って来た…」

父は何も言わずに話を聞く、まるで俺が独り言を紡ぐみたいだと思う

「そうして、在るが儘に生きて死ぬ事を抗い続けた結果が、自然と人を壊して今の廃墟の世界になったのかな…?」

空を見上げて、ただ紡ぐ言葉

答えなんて求めていない、宙ぶらりんの疑問

少しの間に、上空の雲が流れて行く

ただ、俺はそれを見つめるだけで…

「そうかも知れないね」

落ち着いた声色が耳朶に届く

「確かに、どちらにも深い傷が付いた世界だ」

父の言葉に、視線を落とす

だってそれは

『人のエゴ』が招いた惨事と言う事だ

「光だけで人は生きられない…いや、命そのものが良き事だけじゃ無いかも知れないね」

命は時に醜いから

和や喜びだけでは無いから

「怒り、憎しみ、悲しみ、怨み…そうした影は何時も近くに射して居る」

そのエゴや欲が、世界を喰らって、崩壊や亀裂を産んでしまったのか…

握る手に力が篭る

人は、生き物の中でも進化した存在

命以外を生み出し、有から更に作り出す存在

そんな人が、同じ過ちを繰り返すのが運命なのか?

それしか道は無いのか?

傷付かぬ世界は無い

痛みも苦しみも無ければ成長も前進も無い

止まる歩みは死に似ているだろう…

そっと、肩に温もりを感じた

顔を向ければ、微笑む父が俺に触れている

「だから、知らなくてはいけないよ?」

内に巣喰う己の負を

自分に宿る修羅を、怪と成る存在を

「背けずに、見つめなさい。畏れても逃げ出さず向き合いなさい」

人は弱いから

最悪を想像し、混乱し、たやすく目を閉じてしまうから

投げ出さずに

『自分』を見て歩む事

自分は自分以外に生きるのは難しい

その当たり前すら見失ってしまうから

「…父さんも、迷う事有るの?」

想像付かなくて、苦笑を浮かべる

「そうだね、有るよ」

「例えば?」

「ん〜、散歩に行くか、昼寝をするか?とか…」

「何それ」

余りにあっけらかんとした迷いに思わず笑ってしまう

「まぁ、結局は飛燿に怒られてしまうんだけどね?」

小さく肩を竦め、困った様に笑う姿は俺から見ても小さな子供を思わせる

「飛燿さんも大変だなぁ…」

あの人にも苦労が付いて回るのは息子からしても少々忍びないのだが

「なに、あれはアレで楽しんでる節が有るからお互い様だよ」

と笑う父を見ると案外2人は近いんだな、なんて思ってしまう

…口にしたら飛燿さんには怒られるから言わないけど…

「深く悩んでも朝は来る、今は体を休めなさい」

ポンポン、と2、3度肩を叩かれる

俺が頷くと父はゆっくり歩を進めた

「あのさ…」

「ん〜?」

俺の呼び掛けにコチラを振り返る

「色々ありがとう、お休みなさい」

休みの挨拶をして頭を下げる

「うん、体に気を付けるんだよ?」

にこりと笑い父は廊下を曲がって行った…

夜風が静かに吹く

寒さが強くなり、思わず身を抱いた

見上げる空は相変わらず綺麗で、少し軽くなった体で俺も自室へ向かう

何気ない今だから

背けずに、逸らさずに

生きて、行く

そうした道程の中で、自分が出来る事を精一杯貫く

そうして生を全うする

何度でも魂にそう刻んで

俺は俺と生きる

今年もそう、自分と約束する


決して違えぬ信条を

我が身と刀に携えよう


そうやってまた一つ

夜に降る光を数えるんだー…
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