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生き物達の歌


今、野良猫(多分)と犬が一斉に鳴いてる(笑)

猫3匹(推定)と犬1匹


感覚が音繰にシフトして、感想が「何か、歌ってるみたいな感じだな」って聴いとりますw


ミャーとかニャーとかギャーとか色々鳴き喚く猫と必死に吠える犬(笑)

BGMは秋虫と風と遠い車の走行音




なんだろうな、音繰が言ってるんだけど、

「世界は歌と音に溢れてる」

そうだなぁ、って思った(苦笑)

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自由に象る


自分でアバター的なのを自由に組み合わせられたら良いのにとか思うこの頃←


イラスト表現が絶望的な自分には、その方がキャラの容姿を伝えられそうだよなぁ;(溜息)

mhrbイメがそりゃあ一番だが、地味に違った(サイサムイメと颯刃の容姿)り、イメが無かった(施設組とか)りするからなぁ;

某SNSでチョット試しに作ってみてるけど、やはり思い通りとは行かないね(そりゃそうだ)

※今は漣の容姿を意識してますが…どうだろ?;



直接(媒体は挟むけど)伝えられないのって、やっぱりもどかしいもんだなぁ;


現在での選択

 
空が、夕暮れに染まり出す。

コンクリートの瓦礫は赤を反射し、その中をただ私達の存在が響くだけ。

探し人にはまだ会えていない。
何度か通話も試みたが、不通で終わっている。

黙々と生命感の無いこの異様な空間を歩き続けていると、前方を行く九龍君が静止を促した。


「…ガーディアンかい?」


前方を注意深く見据える彼に問い掛ける。


「はい、シヅキさんは危ないので隠れて、なるべく動かないで居て下さい」


彼は得物である刀の柄に手を掛け、戦闘姿勢を取りながら答えた。


私は横に有った大きな瓦礫の陰に身を屈めて様子を窺う事にした。

一度、目を閉じて小さく息を整えている…アレは洗心と呼ばれる知覚者のスキルで、雑念を排除し敵に集中を促して居るのだろう。

ヒラリ、緑の布が靡くと同時に硬質な音を立てて白刃が空中で静止する。


ガキン、ガキンー…!!


そっと瓦礫から戦場を覗いているのだが、私にはやはりガーディアンを感知する事は出来ない。

虚無に対峙する九龍君の表情は真剣であり、ジワジワと損傷して行く様はあまり戦況が芳しく無い様子に思える。

出血したのか、白い服に赤が滲み出している。
痛みからか僅かに顔を顰めても尚、剣劇の様は止まらない。

このままでは不利だ。

そう感じた私は、そっと白衣の内側に手を忍ばせた。


「…はぁ、はぁ…」


彼が、肩で息を切らしながらも目の前の敵を排除する。

貫通、出血した肉体は着実にダメージを蓄積しているだろう。


果して、上手く行くかどうか…。


オレンジとも茶とも呼べるレンズをした眼鏡を身に着けた私は、素早く手先でキーを打ち続けている。

この眼鏡は半バーチャルプログラムを見せると同時に私の作ったメインコンピューターにアクセスをする端末でもある。

肉眼で九龍君の状態を見ながら、半仮想のキーボードを操作する、小さなウィンドウが増えては消えを繰り返した後、目的の画面が開かれた。


激しい音に顔を上げれば、攻撃を受けたであろう彼の体が先の立ち位置から脇の瓦礫へと打ち付けられていた。


「う…くっ…」


ガラガラと破片を退けながら、彼は握り続ける刀を構え直した。

起動プログラムのダウンロード表示に視線を向ければ、廃墟の電波障害の所為かいつもよりバーの充填速度が遅い。

しかし半分を越えては居る、このまま上手く起動してくれれば良い。

問題は…


「九龍君の体力が持ち堪えてくれるかどうか…」


私の呟きを掻き消し、横薙ぎした刃が風を斬る。


「一閃!!」


九龍君の少し前方、ひび割れた歩道が何かに当たり抉られる。

砂塵がバラバラと立ち上った。


「九龍君、大丈夫かい!?」


声を上げて安否を問うが、大丈夫な筈が無い事ぐらい私にも理解出来てはいる。


「シ、ヅキさん…済みません、硬くて、まだ倒せてない…んです」


だから、もう少し隠れて居て下さい
荒い呼吸の間に紡がれた言葉が耳に届いた。


回復薬を飲む間も無いのか、彼は自己を奮い立たせるが如く声を張り上げて敵へと挑み、駆け出す。


ダウンロード完了まで残り15%


待つ間がもどかしい。
無事に廃墟を出たら、通信速度を改良しようと頭の隅で決めた。

依然として止まない戦闘音と振動を体感していると
良い大人が隠れて、若い青年が傷を負い血を流す現実が滑稽に思えて来る。
思わず自嘲的な苦笑が込み上げてしまう。

プログラムのダウンロード完了を目視すると同時に展開させる。


「九龍君、悪いが君を借りるよ」


独り言と共に彼を捕測する。

やはり適合率は劣るが、計算上は発動可能な数値を確認した。


「これなら問題無い…[同調]!」


刹那の違和感が過ぎれば仮視覚がレンズに投影される。

肉眼で捕捉する事が出来なかった存在が、そこに居た。


「…やはり適合が不安定だな」


認知出来るに至るその姿は残念ながら鮮明度に欠けている。

私はデータベースから情報を検索した。

銃口を持ったその姿が機械型遠隔ガーディアンのものであると判別される。

成程、それで接近斬撃を得意とする九龍君が苦戦を強いられたのだろう。

視線を向ければ渾身の力で敵を弾き飛ばした九龍君が、頭を手を当てて不調の色を窺わせていた。


…やはり、オリジナルとの適合は不和が多過ぎる様だ…


眉を顰めて居ると、前方、猛攻の甲斐有ってか損傷したガーディアンが剥き出しになったコードから火花を散らしながらも、銃口を彼に向けているのが視界に入った。

まずい!!


「危ない!九龍君!!」


同調の反動なのか、疲弊を見せて動かない彼の横を、走り抜ける。
ふわり、と白衣が靡いた。


「!?…シヅキさん!駄目だ…ッ!!」


制止の声を無視し、銃口の前に踊り出る。

瞬間、けたたましい発砲音が反響した。


「[庇護]!!」


展開したスキルが半透明の膜の様な防壁を前方に形勢し、銃弾を制止させる。

阻まれた弾が音を立てて落下した。


「…え…?」


事態を飲み込めていない彼が、目を見開いて硬直している。


「状況把握は結構だが、そう何度も使えないんだ
戦闘は君に任せて居るんだよ?九龍君」


ハッ、と我に返った彼は刀を握り締めて脇を駆け抜けていく。

強く右足を踏み込んで刀を振り下ろした。


「砕岩!!!」


硬質な音と共に銃身が断ち切られる…が、本体への切り込みは浅かった。

機械音が続き、そのまま攻撃に転じようとガーディアンが振動する。


ふと、私は視界が鮮明に変わったのに気付き、声を上げた。


「横に跳ぶんだ、九龍君!!」


言うや否や、我が身も右へ翻す。

彼は声に従い、左へと跳んだ。

瞬間。


「セクサ・イリディエーション!」


凛とした声と共に放射された光線が迸しる。
それは我々の間を真っ直ぐに飛び、ガーディアンの胸部を貫いた。

穴を穿たれ火花を数回走らせた機械は、ガラガラと崩れ落ち、静止する。


「…上出来だ、東條君!」


私は眼鏡を外しながら、後方に視線を向けた。


「お怪我はありませんか?」


金の髪を揺らし、予想通りの女性が瓦礫の陰から姿を表した。


「問題無い、九龍君が私の護衛をしてくれたからね」


視線を呆気に取られている彼に向ければ、彼女がそちらに歩を進める。


「この度はご迷惑を掛け、申し訳ありませんでした…しかし、この方をお守り頂いた事、深く感謝します」

「は、はぁ…」


一礼をした彼女は手早く取り出した回復薬を彼に渡した。


「あの、この人は…?」


戦闘の疲労と理解不能な状況下に陥っているであろう九龍君が、戸惑いがちに私を見上げてきた。


「彼女は私が探していた護衛の人だよ」

「え、あ、そうなんですか…てっきり工作員みたいな人かと…」


彼の言う工作員とは、機構の護衛を務める特殊工作員の事であろう。


「さて、コレにて条件は満たされた!
九龍君、君の願いに応えよう」


私はにこり、と微笑みを浮かべ、端末を取り出す。

ポータルを起動させ、学園の近くへとリンクさせる。


「行こう、君を待つ人の元へ…!」


我々は瞬間的に光となり、廃墟から姿を消したー…



―――――――――――――――――――




些か離れた位置に、学園が見える。

無事に移転完了し、人気の無い路地へ降り立つ。


「あ…」


見覚えが有るのか、九龍君は辺りを見回して場を確認している。


「君の生体情報を到着と共に発信しておいた
直に学園の誰かが来るだろう」


端末を仕舞いながら、私は彼へと助言を渡す。
すると彼は嬉しそうに笑って、礼を述べてきた。

数分もすると、通りの向こうに数名の人影が現れる。


「颯刃!!」


黒髪の青年が九龍君を呼んだ、どうやら彼等が迎えの様である。


「シヅキさん、本当にありがとうございました!」


何度目かの謝礼を聴く。


「いや、コチラこそだ
そうそう、済まないのだが、我々の事は内密にしてくれ無いかい?」


機構の方でも騒ぎになられるのは苦手なんだ、と苦笑混じりに願えば、暫し思案した後で解りました、と返答が返る。

「ありがとう
さぁ、君が居るべき場へ戻りなさい?


私が促すと、彼は一礼の後に歩き出す…と、不意に振り替えり私の目を見据えて来た。


「シヅキさん、また何時か…逢えますか?」


私は問いに応えなかったが、変わりに淡く笑みを浮かべると彼は微笑み返し、今度こそ振り返らずに走って行った。


「無事だったのか?」
「うん、心配掛けてごめん」
「…えぇ…戻ったら治療しないと…」
「全く、オレ様を落っことすとは、トンデモ無いボンクラだぜ…?」


談笑の数と人影が合わない気がしたが、再会の喜びを遠目から見るに留める。


「…宜しかったのですか?」


隣に居る彼女が、彼等から私に視線を移し、問い掛ける。


「心配無いよ、彼は約束を守ってくれそうだ」

「…そうですか」


それ以上は彼女は口を開かなかった。

私は踵を返し、帰路へと歩み出す。
彼女がそれに続く。


『また…逢えますか?』


「…逢えるさ、君が選択した未来で…きっと…」


心に反芻した問いに私は小さな解答を返した。

その呟きは他者に届かず、世界へと霧散する。



今日も、何処かで、世界が変わった…ー
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過去からの分岐

 
あれから、随分な時間私達は廃墟を探索した。


「…九龍君、少し、休憩にしよう」


肩で息を切らしながら、割れた歩道を進む。


「疲れましたか?シヅキさん」


振り向く彼はまだまだ元気そうに見える。
…知覚者の身体能力は一般人より遥かに高い…が、どうもそれだけでは無い様な気がしてしまう。


「…はぁ、老いは取りたく無いモノだね…」


心からの呟きが、つい口を突いて零れる。


「シヅキさん、そんな歳じゃ無いじゃないですか」


冗談に受け取られたのか、あはは…と笑われてしまった。
コレは喜ぶべきなのか、悩むところだ。


手頃な瓦礫に腰を下ろす。
人気無い静寂に風が木の葉の擦る音が響いている。

さわさわ、さわさわ…

九龍君も辺りを確認してから近くの場に座る。

危険な場所とは思えない、落ち着いた空気が流れている。


「九龍君は、廃墟が好きかい?」


風に身を任せながら、何気なしに尋ねてみた。


「どうですかね…?
嫌いじゃ無いですけど、やはり純粋に好きとは言えないです」


知覚者には、廃墟に巣くうモノが解ってしまう。
異形の存在、自身に迫る危険、恐怖…やはり知っている事で変わる認識も有るのだろう。


質問を投げ掛けておいて押し黙ってしまった私を、彼は気分を害する様子も無く窺っている。


「あの…シヅキさんは、医者か何かなんですか?」


間を繋ごうとしたのか、今度は彼から質問を向けられた。
恐らく、この容姿から推考したのだと思われる内容。


「医学知識は多少有るが、私は医者では無いよ」

「え、じゃあ…科学者みたいな感じですか?」

「そう見て貰って構わない…どうかしたのかい?」


『科学者』と言う単語が出た後、九龍君は一瞬視線を落とした。


「いえ…チョット思い出したんです…ユートン教授の事を…」


そう言って苦笑を浮かべるが、その表情には何処か遣り切れない感情が見える。


「ユートン教授、と言うと保全機構の科学者だったね?
頭の良い人だと伺ったが…惜しい人を亡くしたモノだよ…」

「シヅキさん、知ってるんですか?」


そう言って彼は、驚いた様子で私を見る。


「直接会った事は無いが、様々な噂を聴いた事は有るんだ
武器工学等に秀でた人だったらしいけど…一度会ってみたかったと思うね」

「……済みません…」


何の意図も無い話だったのだが、九龍君は視線を落として頭を垂れ、謝罪の言葉を呟いた。

握り締められた手が、微かに震えているのが解る。


「何故、君が謝るのかな?
彼は確か、廃墟の戦闘に巻き込まれて亡くなったと聞くが…」

「あの時…教授の護衛を務めていたのは、俺達なんです」


その日、を思い出しているのか、彼は遠くを見る様な目をしていた。

学園からの任務でユートン教授の護衛を任された九龍君達は、教団の恐るべき陰謀を打ち破る事に成功する。

しかし、代償にユートン教授は息を引き取ったのだ…。


「そうだったのか…」


語られた真実に、私も想いを馳せる。


「教授は、死ぬ事を覚悟して廃墟に赴き、教団を止めたんだと思います」


九龍君は毅然とした口調で私を見詰めた。


時々思うのだ。

この荒廃した世界で、年端の行かぬ子供達は苛酷な現実の中を、生きて行く。

それが乗り越え、癒えるならば良いが…中には深い心の傷を産み、それがその子を蝕むケースも少なくは無い。

この様な世界にしてしまったのは、言うまでもなく過去を作り上げてきた、我々大人である。

ならば…、この現在を少しでもより良く戻すのも、罪を犯してきた我々の全うすべき事に違いない。

恐らく、ユートン教授も己が犯した罪を清算しようとした一人のだろう…。


「彼は、成すべき事を成した
それは選択の末の結果なんだろうね」


九龍君は黙って聴いていた。
彼は彼なりにその結果を受け止めて行くのだろう。

時に、他者の選択が他人に大きな影響を与える事が有る。

だからこそ、選択は慎重に、しかし実直であるべきなのかも知れない。


「…そういえば、シヅキさん」


話題を変えたかったのか、九龍君が再び質問をして来た。


「シヅキさん、ナノマシンは大丈夫なんですか?」


廃墟にはナノマシン、ウィルスに近い媒体が蔓延しており、耐性が無い者は身体に変調を来たす事が有る。

それを彼は心配したのだろう。


「問題無いよ、既に抗ナノマシンワクチンプログラムは投与済みさ」


掌大の小型携帯端末を取り出して見せる。

彼はそれに見覚えが有るのか、すんなりと納得した。


「シヅキさんって、ひょっとして機構の人なんですか?」
「ん?どうしてだい?」

「いや、そう思っただけなんですけど…」


彼が自信が無い様子で口ごもる。


「私が機構の人間ならば、君達の味方かも知れないね?」

「…え、そんな、まさか教団の?」


多少動揺した彼に、思わず苦笑した。


「私は強いて言うなれば国に属する者だ、争い事は好まないし、中立的な立場に居る」

「つまり…?」

「私は君達の味方でも敵でも無い
それを決めるのは、君達自身だ」


意図を掴めていないのか、眉を寄せる九龍君を横目に私は腰を上げ、白衣の埃を軽く払う。


「さぁ、日が沈んでしまう前には合流したい
もう一頑張りと行こうか!」


歩き出した私の後を慌てて立ち上がった彼が追い駆けて来た。

鍔鳴りの金属音と足音がやがて一定に保たれる。


日が確実に陰り始めた廃墟は、何かの気配を孕みつつ、静まり返っていた。
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未来との邂逅

 

激しい崩落音と衝撃に気が付けば、瓦礫の上に落ちていた。

命が有っただけマシか、そう思った矢先に何かが動いた気がした。

こんな所で、私は死ぬのか…。

不甲斐無さに目を閉じて思わず苦笑が漏れた、瞬間。


「砕岩!!」


何かが吹き飛ぶ衝撃と、更に瓦礫が崩れる音が耳を打つ。

何だ、助かったのか?
再び開いた視界に、一人の青年の姿が有った。


「大丈夫ですか!?」


白っぽい容姿に緑が映える、青年は周囲を見回した後、私の元へ駆け寄って来た。

肩を借りて瓦礫から脱出する。


「有り難う、助かったよ」


礼を述べれば、無事で良かったと笑みを向けられた。
ふむ、最近の若者にしては謙虚な性格の様だね。


「貴方は知覚者なんですか?」

「いや、私は一般市民で、知覚能力は持っては居ないよ」

「知覚者じゃ無い人は危険ですから廃墟には…」

「あぁ、廃墟探索許可なら持っては居るんだ…無論、合法の物だよ?」


一般人の私が廃墟に立ち入れる事に、青年は驚きを見せる。
無理も無い話では有るが、やはり珍しい部類なのだろうか?


「貴方、一人で廃墟に?」

「いや、私を護衛してくれている同行者が居るんだが…」


先程脱出した建物を見遣るが、人の気配は無さそうである。


「…逸れてしまった様だね」


肩を落とし、小さく溜息を吐く。
優秀な同行者だ、恐らく反対側か、別なエリアへ退避したのだろう。


「俺も、さっきの崩落で仲間と逸れちゃいまして…」


青年が苦笑混じりに話したのは、あの建物内部で遭遇したガーディアンを仲間と駆逐していたは良いものの、予想以上に老朽化した建物が衝撃に耐え切れず倒壊し、その瞬間、私同様に仲間と逸れてしまったとの内容だった。


「成程、つまり私達はお互い同行者と逸れた迷子、と言う事か」


そうみたいですね、と青年も肩を落として笑った。


「ところで、君は知覚者の様だけれど、学園の人なのかな?」

「あ、はい」


それならば話は早い。


「君、ミミイを持っていないかな?
確かアレには位置確認機能や救難信号発信が出来たと思うんだが…」


学園の生徒や関係者に配布されているM.I.M.I(ミミイ)は緊急時救済システムが搭載されていて、一般流通型(通常商品)とは根本的に性能が異なっている。

早い話が、学園のミミイが有れば救助確率が格段に上がる、と言う訳だ。


「すいません…実は崩落の時に、携帯落としちゃったんです」


目に見えて申し訳無さそうにする青年に、ただの確認だから、と苦笑して見せる。

携帯に付いていたミミイは恐らく緊急退避プログラムを発動、彼の仲間と共に安全地点まで移転した筈だ。


それに携帯だけならば私が所持しては居るが、この廃墟では電波障害が激しく、一定範囲内の通話しかマトモな送受信が望めない。


「せめて、ポータルが見付かれば良いんですけど…」


青年は注意深く辺りを見回すも、目的の物は目に付かない様だ。

彼の言うポータルとは『ポータル・リンクス』と呼ばれる移転装置の事だ。
登録されてあるエリア・区画に一瞬で人や物を移す事が出来る。

短距離間ならばミミイにも搭載されている機能である。


「ポータルならば、私が所持しているよ?」

「えっ!?本当ですか?」


希望に満ちた表情で見上げられてしまった。


「だが、同行者を置いて行く訳にはいかないだろう?」

「あ…そう、ですね」


幾ら優秀な知覚者でも、捜索しながら単身で進むには限界が有るモノだ…途中で何か有っては困る。


「じゃあ、こうしないかい?」


悩んでいる青年に、私は一つの条件を提示した。


「君は私が同行者と遭遇するまでの間、警護をしてくれないかい?
無事に我々が合流出来れば、私が君を学園の近くまで移転させてあげよう」

数瞬彼は悩んだが、すぐに頷いて了承をしてくれた。


「今の俺に出来る事は貴方の手助けになる事だと思います」


「結構!
では、探索を始めるとしようか…えぇと?」


ふと、青年の名を聞いていない事に思い当たる。

彼も私の様子に気付いたのか、ハッとした表情を見せ、自己紹介を切り出した。


「俺は、颯刃です。九龍颯刃」

「九龍、君だね?
私の事はシヅキ、と呼んでくれたら良い」

「シヅキさん、解りました!」


お互いに顔を見合わせた後…彼は首に掛かる緑の布を、
私は身に纏っている白衣を靡かせ、砂埃が漂う廃墟の中を歩き出した…。
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