卵が、卵を叩き割るなんて、有ると思うかい?
卵から還った雛なら、そうするかも知れない。
でも、等しく親鳥に抱かれ、巣に収まる卵が、そんな事をするなんて…有ったとしても意図した訳では無いと思わないかい?
卵を割る掌が静かに迫っても、卵は逃げないだろう。
だから、人は皆等しい卵だ。
なのに、何故、卵から還った瞬間に傷付け合ってしまうのだろう…?
共に境界無き空を、羽ばたけると言うのに…。
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大切なモノ程、内側に覆い隠す。
しかし、時にそれは無造作に、剥き出しで曝されている。
ドチラが真に大切かなど、どうして推し量れ様か…?
嗚呼、今…此の喉を、胸を引き裂いて、アナタに見せれたらどんなに素晴らしいだろう…。
世界中の言語、記号、あらゆる現存する動作。
その全てを以ってしても、此の内に荒ぶる激情は表現出来はしない。
まるで形而上数学の最たる難題の様だ。
苛烈なる奔流の様で有り、悠久の安寧の様でも有る。
二律背反を積み重ねたコレを、「愛」や「死」等では語れないのだ。
此の身の内を焼け焦がし、癒す「それ」
「魂」や「心」「感情」
「肉体」「神経」「永遠で非なるモノ」
それ故に醜く、美しい。
至高の存在、愚劣な姿。
愛しくも憎らしい「それ」は、果して「大切」なのだろうか…?
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見詰める。
唯一、相手の内側を見える窓を…。
その奥は暗い。
だが、燈るのだ。
だから、逸らさずに見詰めよう。
言葉より顕著に顕れる輝きを…。
だから、どうか畏れずコチラを向いて欲しい。
コチラが逸らしたなら、それは此の光を見せたくは無いからなのだ。
アナタが嫌いだからではない事を、解って欲しい。
だから、知りたくて、伝えたくて。
アナタの窓を、今日も見詰める事を、赦して欲しい。