漣の過去話書き殴ってみた
多分ネタバレじゃあ無いとは思うが……
前にも何回か出してるから目新しくは無いかも知れない
要点纏まらないだろうなぁ〜(苦笑)
潮騒、海風、乱反射する日光
そんな俺が産まれた街
頑固な父親の育成計画通りに、俺は国軍仕官学校に入学した
面倒な規則、退屈な授業に備えて耳を塞ぐ黒いヘッドフォン
肩を叩く2人の幼馴染み
「僕も……誰かの力になりたいんだ」
落第ギリギリの相棒は、確かな夢を掲げる
「俺は、上に行く。お前達を上手く使えるのは、俺だろ?」
優秀主席な親友は野心を燃やして先を行く
俺は、何も無かった
別に軍人になりたい訳でも、明確な理想も無くダラダラと日々を潰しているだけだ
「俺が、お前の夢を見といてやんよ」
膝を折る相棒は、何時しかかけがえ無い存在に変わる
進路の選択、それが悪夢の引き金
「上で待ってやる。優秀に鍛えられて来いよ?」
皮肉屋の親友を笑って見送った
特殊工作員
廃墟活動を担う、今1番危険な役割
「漣は僕のバディだから」
「って事は、お前は俺の半身って訳だな」
仲間と向かった初めての廃墟活動
崩れた瓦礫に塞がれた出口
暗闇の中を、ただ進む
「っ、漣……助け……!!」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
降り下ろされた異形の刃は俺の半身を貫いて嘲笑う
無我夢中で引いたトリガー、沈黙と静寂
「化け物が、彼奴を殺したんだ!」
仲間は異物に怯える目を向ける
「待て、本当に化け物が! 何で信じ無ぇんだ!?」
閉ざされた扉、拘束された両手
やがて聴こえる耳障りなノイズ
「何で、何で……俺は、俺が、オカシイのかよ!?」
そして響く断末魔
「……っ、俺が、絶対に……助ける!!」
引き千切った拘束、滴る赤
ノイズを頼りに駆ける闇
「こっちだ! 早く来い!!」
「うわぁぁぁ、来るな、化け物ぉぉ!!」
着弾する弾丸、飛び散る飛沫
反射的に撃ち返す
悶え、絶命する怪物
「……誰か……聴こえないのかよ……」
繋がらない言葉
尽きた食料、頼り無い装備
「嫌だ。絶対、此処から出るんだ!」
仲間の肉に噛み付いて、吐き戻し
化け物の血肉を貪り、僅かな武器を奪ってやり過ごす
何時しか気付いた異変は
消えた相棒の死体だった
「彼奴等に……喰われたのか……?」
現実は、予想を越えて残酷だ
「誰か居るのか!?」
闇に慣れた目が捉えたのは、肉を削がれたかつての仲間
迫る姿を射殺して逃げ込む個室
「嘘だ。嘘だ。だって、そんな筈無ぇ……だって、彼奴は……」
震える体、見上げた先にひっそりと稼働するソレが有った
『約束。絶対悪用なんかしちゃ駄目だからね?』
何時かの声が脳裏に再生される
『分かってるって!!』
『本当に?…………うん。信じるよ』
起動したプログラム
異様にモニターが眩しく感じた
『はい、誕生日おめでとう! 漣』
「悪ぃ、約束……守れ無ぇ……」
呟きに答えは無かった、代わりに開かれたのは、真相
「ヴォイス……プロジェクト……?
こんな、下らないモノの為に……俺は……彼奴等は、死んだってのか?」
ゆっくりと部屋を後に扉を閉ざす
もう、ノイズは聴こえない
暗闇から響くのは、近付く足音
「…………」
「ァ、アァ……ア"……」
予感してた
分かってた
何時かこんな日が来る事を
腐りかけていても、間違える訳が無ぇじゃんか
「……草太……」
半身の名前を呼ぶ
そいつは、両手を伸ばしてゆっくりと近付いて来る
……ズル……ズル……
近付く面影、滲む視界、冷える体
「もういい。疲れた」
頬を伝う水筋、浮かぶ微笑
「……殺してくれよ」
迫る相棒に笑って、瞳を閉じた
「っ、あぁぁぁぁぁ!!」
首筋を噛み千切られそうになる痛み
「ぁぁあぁぁぁぁ」
熱い、痛い、痛い
痛い、辛い、痛い、嫌だ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ
嫌だ、俺は、まだ……
頭の中に、閃光が散った
響く銃声
倒れる化け物
血が溢れるのも忘れて、妙に荒い呼吸と動悸が脳に反響する
握りった銃をそのままに背を向けて逃げ出した
嫌だ と感じた
痛い と震えた
駆け込む武器庫、目的の物を探す
紛れもなく、俺は理解した
「……あった……」
俺は、まだ『生きたい』事を。
頭に叩き込んだ地図を頼りに仕掛けた爆弾
此処から出る、生きて出る
起爆装置を握り、開かれた入り口を睨んだ
やがて引き寄せられた様に、草太が緩慢な動作で姿を見せる
「悪ぃ。俺は、卑怯だった」
近付く面影に1人語る
「お前に殺せ、なんて間違ってた
そんなの、お前にやらせる事じゃ無ぇよな」
ズル、ズル
弾丸を喰らった辺りからは変色した体液が滲んでいた
「痛いよな……多分。
お前を撃つなんて、考えてすら無かったのによ」
伸ばされる腕
でも、もう触れたりはしない
「俺は、生きる。生きて生きて、死ぬまで生き抜く」
大事な親友。唯一無二の俺の半身
「だから、さよなら、だ」
歪な笑顔を向けて、スイッチを押した
暗い
体が痛い
生きて、いるのか?
それとも、死んじまったか?
聴こえる
微かに、確かに
聴こえる、波音
「っ、は……」
薄く開いた目には、瓦礫
指先の感覚を確かめて藻掻いた
薄明かりの向こう
聴こえる
誰かの、声
此処に、居るぞ
此処に、生きて
渾身の力で瓦礫を背で押し上げ、頂点に立ち上がる
途端に体を騒がしい波音と潮風が包む
眩しさに閉じた目を開けて、見上げた空
鮮明に、どこまでも澄んだ青い空は
俺の脳裏に焼き付いて、今も消えない
横目に駆ける人影を認識する前に、意識が途絶えて消えた
目を醒ましたのは終わった後だった
瓦礫は既に捜索され、死体無き葬儀が執り行われ
体の傷も嘘みたいに快方へ向かっていた
そんなある日『機構』から人が来た
そいつは俺に2、3質問し頭下げてきた
どうやら俺は『知覚者』だったらしい
餓鬼の時の能力検査に誤りがあって、今の今まで一般人として生活したんだと
学園に誘われたが、俺は返答しなかった
また来る、と言ってそいつは帰った
ざわざわと噂が飛び交う生活にうんざりする中で、今度は教員達が口を開く
何でも知覚能力を活かして任務に当たって欲しいと
一般人の廃墟活動は危険過ぎるから、知覚者の俺を有意義に割り当てたいらしい
正直、嫌気が差していた
知覚者だと分かった瞬間変わる態度も
根拠も無い誹謗中傷も
仲間の遺族から向けられるやり場の無い感情も
全部鬱陶しくなって、また両耳を音で塞いだ
そして1発の銃声と共に、俺は学校を後にした
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漣の知覚過敏症は首筋の傷に付着したナノマシンウイルスから感染した廃墟症
しかし、元来の抵抗力が高かった為に完全な発症には至らず、刺激に対して過敏になる程度から悪化してはいません
ゾンビ型ガーディアンに変わった仲間達を
死体に喰らい付き、化け物を飲み込んだ自分を
『人間』と呼ぶのは正しいだろうか?
誰かの欲望の為の犠牲を、黙認してやり過ごすだけで良いのか?
人間と知覚者の間
日常と非日常の間
虚構と真実の間
善でも悪でも無く、ただ生きて死ぬ為に
当たり前の声を上げるために
手を汚して傷付いて疲れ果てても前に進む
だって生きているんだから
漣の覚悟と葛藤は長い時間の中に続いているのでしょう