テレビがいまだに続けるコロナ報道の矛盾 2年経ってもその姿勢は変わらない
12/12(日) 9:06

 新型コロナの蔓延(まんえん)から間もなく2年。テレビは手を替え品を替えコロナで騒いだが、2年経っても基本的にその姿勢は変わっていない。今更ながら変な報道を。

 夕方になるとテレビから流れてくる「今日の新たな感染者は19人」のフレーズ。「新たな」という場合はより深刻な状況になった時の言い回しだと思う。落ち着いている時は「今日の感染者は19人」と平易に表現するだけでいい。あおりたくて仕方がない報道姿勢が透けて見える。

 人流が増えていることをこれでもかと強調するために、「渋谷は前週比で20%増えた」などと放送していたが、人流が増えても感染者数が減っている矛盾に気がついていたのか、わざとか。

 オミクロン株が出てきて多くが大人数の宴会を控えているという報道はまさに今の話。だが、実際に街の飲食店は密状態ということも多い。そういう人は「テレビは今度はオミクロンで商売するのか」とか「重症化しないといわれている」と考えての行動だと思う。ところが、街のインタビューでは「飲食は2、3人で2時間程度」「オミクロンが怖いから飲み会はしない」という声だけを取り上げる。明らかな印象操作。放送法的に問題はないのか、BPO。

 第5波の時、テレビは「医療逼迫(ひっぱく)」と言い続けた。これは誰に向けての言葉だったのか。多くは、そのためにマスクをして用心して生活していたから、「医療逼迫」と言われても「誰に言ってんだ?」と思った人も少なくない。この問題を解決できるのは国とか自治体、医師会。こちらにしてみれば「俺らに言うなよ」。テレビは矛先を間違えていた。

 人流一点張りの分科会の尾身会長が、このところ姿を見せていない。尾身会長はNHKの番組に出演して、「我々の役割は本当のことを正しく言うこと」と語った。

 人流が増えているのに感染者が減って、合わせる顔がないのだろうか。

 厚労省のコロナの責任者のひとりに雑談でこの間の対応について聞いたら、意外にも明快に答えてくれた。尾身会長の言う人流一点張りではなかった。人流は尾身会長周辺の意見だったのだろうか。

 日本人全員に一斉に抗原検査を、と言ったコメンテーターもいた。増やせならわかるが、全員一斉は荒唐無稽。

 ここらでいったんテレビは総括が必要だ。

(文=峯田淳/日刊ゲンダイ)