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籠から覗く断界


さて、コイツをどうしてやろうか?

羽根をもいで地に落とそうか?

それとも、蛹のまま握り潰してみようか…?

―――――ーーーーーーーーーーーーーー

「変態」

「えぇっ!?俺ただ片付けしてるだけだよねぇ!!?」

足を組んで軽く頬杖をついたままコチラを見ていた部屋の主は、開口一発酷い言葉を言い放った。

甲斐甲斐しく散らかった資料を纏めただけで変質者呼ばわりはあんまりじゃないか…。

「言っておくけど、俺変態じゃ無いからね?」

退屈そうな表情の相手に、正直俺の話なんて右から左へ抜けているだろう。

それでも一応、俺にだって人としての尊厳は有る。

「つまらんな」

あぁ、やっぱり無視された…。

そんなに退屈なら掃除くらい自分ですれば良いのに。

「冬に羽化しても死ぬだけだぞ?」

…脈略が無い。

「…何の話…?」

軽く半眼になりながらも、俺は片付けを再開した。

おそらく意味なんて無いのだ、この会話は。

「春を待つか、そのまま永久に蛹の中に眠るか…」

どうも彼は昆虫の話でもしている様だ。

…意味も訳も俺には解らないけれど…。

「普通、春を待つものじゃないの?」

ファイルを棚に仕舞いながら答える。

幾らなんでも独り言を撒き散らす男と一緒ってのは微妙だし…。

「ほぅ…?」

初めて彼の意識が俺に向いたようだ。

「だって、虫ってそういうものでしょ?」

そう繋げれば、「ククク…」と何時もの如く笑われた。

何か変な事を言ったつもりは無いのにな…。

「全ては本能の導くままに…か…ククッ…」

何やら自己完結したらしく、彼は俺が片付ける間、大人しくなった。

パタン、とドアを閉めて自室へ向かう。

「…何だったんだろ?」

人が言う様に、彼は変な所が有る。

そう思い返しながらも、俺はあまり考え無い事にした。

さて、部屋に行ったらどうしようかな…?


―――――ーーーーーーーーーーーーーー

選択と欲望をその身に湛え、胎動する…か。

今暫くコレを観察するのもまた一興。

ククッ、と笑みを零す。

春を舞う幸福か、

永遠に空を知らぬまま囚われるか、

若き蝶の夢はまた儚いモノ…。

華が散るは時間の問題。

ぼんやりしていれば全てが手遅れ。

この弱々しい存在の顛末、その事象。

どんな運命を手繰るか、囁かな分岐を俺は見届ける事としよう…。

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