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祭火に揺れる幻色の…

独特の熱気と胸躍る囃子

誘われて踏み込めばそこはいつもとは違う世界…

カランカラン…と下駄の音

周りの露天は賑やかに夜の一角を照らしている

「祭りなんて久々だよ」

にこり、と笑う男子

その横を少し落ち着かない様子の女子が歩いている

「…颯刃…」

「ん?」

名を呼ばれ振り返る

その姿は本来の白灰の髪に緑の瞳ではなく、濃茶の髪に群青の瞳だ

対する女子も濃茶の髪を結い上げ、戸惑いがちな紫の瞳を颯刃に向けている

「鳴狐、どうした?」

普段と変わらぬ口調に少し落ち着きを取り戻す

「あの…変…じゃ、無いかしら…?」

本来は真っ白な髪に映える赤の姿である自分に今の状態は違和感が有るのだろう

一見すると解り難いのだが、今は不安と困惑が伺えている

何故、有るべき姿では無い2人が居るのか?

それは少し時を遡る話でー…

ーーーーーーーーーーーーーー

唐突に斎に颯刃と鳴狐が呼ばれたのは、既に夕刻を回る時間だった…

「話、と言うのは他でも無い、お前達についての事だ」

いつもの不遜な口調に2人はただ静かに話を促した

「最近、色々と物騒だからな。お前達は目立つし、少し変容させる」

さらり、と凄い事を言った気がする

「…変容…?」

鳴狐が訝しげに斎を見ている

鳴狐は地味に斎を疑うのだ

…尤も、不信感と言うより、突拍子無い言動に呆れている様にも見えるが…

「何、たわいない事だ。現に俺も勇音も経験している」

薄ら笑いを乗せたまま斎は『何て事は無い』と言外に伝えて来る

そういえば以前、勇音が絶叫し落胆し苦悩と羞恥に葛藤していた姿が脳裏に浮かんだ…

「具体的には?」

正直、性転換は避けたい

勇音には悪いがやはり我が身となるとそこは避けたくなる

「髪と目と若干顔立ち等を変える。今回は様子見だがな?」

…最悪の事態は避けられそうだ…

鳴狐に視線を向ければ、言外に判断を問われてしまった

無論、斎の事だ…下手に断るのは得策では無いだろう

そうして、頷いた俺達に楽しげな笑みを浮かべ、斎は変容方程式を証明した

…痛みも異変も特には感じなかった…が…

「…何で、浴衣?」
 
何故か俺も鳴狐も姿だけで無く服装まで変えられていた

「今日は祭りがあるみたいだからな、ちょっと行って慣らして来い」

ニヤリ、と斎はそう言って俺達を残し立ち去った…

ーーーーーーーーーーーーーー

とまぁ、こんな具合で…

鳴狐は依然慣れていない様なのだ

「変じゃないよ、似合ってる」

素直に思った事を述べると

「…そう…」

とだけ言われた

何とは無しに人混みを進む

不意に鳴狐が立ち止まった

「……?」

じっと一点を見つめる姿にコチラも同じ様に視線を向ける

そこには、一件の出店があった

学園も地域との連携はしているのか、見知った購買員があくせく働いている

本当に仕事熱心な事だ…

「……………」

無言のまま見つめる鳴狐の視線に「あるモノ」があった

なるほど、アレが気になっているのか…

「少し、待ってて?」

「…え?」

軽く鳴狐に話し、俺は購買員に話掛けた…

「はい、どうぞ?」

差し出す手には見知った顔の玩具

「赤いミミイので良かったよね?」
 
躊躇する姿に『気に入らなかったかな?』と苦笑する

「2人で持ってれば違和感無いと思うんだけど…」

自分の分として買ったお面を身に着けてみる

驚いた顔をしていた鳴狐は軽く瞬きをしてから俯き

「……ありがとう……」

と呟き、大事そうにソレを両手で抱えた

少し顔が赤いのは夜店の明かりのせいとしよう

「さ、行こうか?」

にこり、と笑い歩き出す俺の袂が小さく引っ張られる

視線を向ければ白くて細い指先が摘んでいた

何だか自然と笑顔がこぼれる

そのまま、はぐれ無い様にゆっくりと雑踏の中へ…

帰りには皆に何か買って行こう

無数の光、行き交う笑顔

人の心を楽しくさせる祭りの世界

もう少しだけ、彷徨わせていてー…?
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