「銀河万丈ってわかります?」
元山さんは開口一番そう言った。
「……わかるというか、その、お宝鑑定団とかのナレーションの人?」
「そう!」
鐘子は、姉の影響もあってなのか、少しばかり(あるいはそれなりに)アニメの知識がある。
が、普段はそれを隠している。
「銀河万丈が生きてるんですよね」
「……?」
「ですから、銀河万丈は亡くなったはずなんですよ。そういうニュース、確か2012年か2013年に間違いなく見てますから」
力説する元山さん。意味がわからない鐘子。
「たぶん、世界線はひとつじゃなくて、俺、別なところから紛れ込んだんじゃないかなって。いや、変なこと言ってるのはわかってるんです、でも……すみません、まぁ、いいや」
鐘子は返事をしなかった。
ただ。
不思議なことに、彼の名前は顧客リストにあった(つまり会ったことはある)のに、間違いなく初めてと確信していた。