西崎さんの営業車。カーナビのいい加減さに定評がある。
「『200メートル先、右方向です』とか言うけど、ガードレールぶち破れっつーのか、って」
直線の高速道路上で、高架下の道路情報を拾ってしまう。
とんでもない欠陥品である。
ある冬の日、いつものように営業の帰り。すでに日は落ち、道はまっくら。
『100メートル先、左方向です』
いつもの誤情報である。気にせず、西脇さんは件の地点を通過した。
そんなとき、バックミラーに光が映った。後続車のヘッドライトだ。
と、次の瞬間。
光は、左に曲がった。
「びっくりしたけど、降りて確かめにいくわけにもいかねーしなぁ」
光が左に曲がったのは、ちょうどナビが指示したあたりだった。
西崎さんは、春から営業を外れる予定である。