鐘子のパソコンは重い。
 クリックひとつで、砂時計が三分続くこともしばしば。


 遠方の友人とスカイプ。
 友人からかけてきたスカイプに、応答を押す。押そうとする。


 またか。


 パソコンは固まってしまって動かない。
 スカイプの着信メロディだけが延々続いている。


 鐘子は電話をかけた。スカイプを使うのは電話代をかけないためだが、こうなればやむをえない。


「また固まっちゃった。動かないから、もう切っていいよ」


 友人、詩春さんは「えっ」と言った。


「だいぶ前に切ったよ。どうせまた動かないんだろうと思って」


 着信メロディは相変わらず鳴り響いている。
 じゃあこれはなんだ?


 タイムラグ?


 そのとき、唐突に応答がクリックされた。通信画面が広がる。


「こんにちは」


 聴いたことがない声がした。