Facebookの「友達かも?」はどういう基準で選ばれてるんだろう。
常々、中平さんが気になっていたことだ。
仕事や出身校が同じ人はいいのだが、経歴や他の友人を見てもいったいどこから自分との関連が導き出されたのかわからない。そんな人がときたま混じっている。
いつものようにチェックしていると、一枚の写真が目に留まる。後ろ向きに立つワンピース姿の女性。
女性の名前は見たことがない。また、関係がなさそうな人が紛れ込んだようである。
プロフィールをチェックしても、接点は全く見当たらない。
ただ、どう見ても写真がとられたであろう場所がベランダである点が気にかかった。
カメラに背を向け、窓から中を覗きこんでいるように見える。
このアングルでは、カメラが空中になければ撮れないのではないか?
などという疑問より、そのベランダが自分の部屋のそれにやたら似ている点ばかりが気になった。
渡里さんは屋久島の出身である。
「有名過ぎてギャグみたいな話なんだけどさ」
屋久島の道路は山を中心にぐるりと一周している。途中、いくつかのトンネルを通ることになる。
そのトンネルのうちのひとつに、「出る」のだという。
「上半身だけのばあ様でね、“けけけ”だったか“かかか”だったか。どっちかがどっちかなんだよなー」
「どっちかがどっちか、って?」
渡里さんはニヤリとした。
「上半身がいるってことは下半身もいるのよね」
噂には様々な尾ひれがついている。上半身が下半身を探しているだとか、両方見たら死ぬだとか、実はそれぞれ別の身体なんだとか。
どれもありそうな話だと思った。
「じゃあ、下半身も別なトンネルを通るときに出くわしちゃう可能性があるわけですね」
「別な、……まぁね」
もったいぶるような渡里さんの物言いに、鐘子は身を乗り出した。
「どこにいるんです?」
「種子島のトンネルよ」