橋谷さんの家には、いわゆる隙間女が出る。
 家の中の隙間隙間に女が潜んでいる、というアレである。

「そういうの、『だから?』って感じ」

 橋谷さんは鼻で笑った。
 実際、ちっとも怖がっている様子はない。幼少の頃から、「見えた」ことはあったが、一度も恐れをなしたことはないのだという。

「こっちは生きてるんだから、死んでる奴がいきがんなっての」

 そんな橋谷さんをなんとか怖がらせたいのか、隙間女はあらゆる隙間から顔を出して見せた。まったく相手にしない橋谷さん。それどころか、変顔を返してあげたりのサービスまで。

 そんなある日、橋谷さんが炬燵をつけようと、コンセントに差し込もうとした、そのとき。

「奴も必死だったんだよな……」

 さすがの橋谷さんも苦笑い。
 女はコンセントの穴に潜んでいた。

「差し込んだんですか?」
「もちろん」

 差し込まれる瞬間、女は「え〜〜〜〜( ; ゜Д゜)」とでも言いたげな顔をしたとのこと。
 さすがに悪いことをした、と思っているという。

 それから女は心なしか離れた隙間に出るようになった。